この記事を読むための時間:2分 今宵のマジックは、どうぞ活字でご覧あれ Magicという単語には、いくつもの意味があります。手品、奇術、不思議な、ステキな、魅力、魔法…。心躍りますね。そんなワクワクをたくさん詰め込んだ、手品や奇術の魅力がいっぱいの、不思議でステキな、まるで魔法のような小説が、本作『魔法を召しあがれ』です。 紹介と要約 主人公ヒカルは、若き青年マジシャン。レストランのテーブルを回ってマジックを披露する、テーブルホッピングで生計を立てています。両親を亡くし、育ててくれた叔父とも死別。淡い恋心を抱いた同級生の少女は、この世から消えてしまいました。友と呼べる者もありません。そんな孤独を背負い、心を閉ざして生きるヒカルにとって、マジックは、唯一の人生の拠り所でした。マジックでお客様を驚かせ、楽しませ。白黒写真のような日々の暮らしにおいて、マジシャンである時間だけは、ヒカルの世界に色が差すのです。ある日ヒカルは、伝説的な老マジシャンと出会い、のちに彼からロボットのミチルを託されました。そこから、停滞していたヒカルの人生は大きく動き始め…。 本書の魅力 喪失と再生の物語が、美しい文体で、静かな語り口で、ゆっくりと綴られてゆきます。その中でマジックは、いわばスパイスのような役どころでしょうか。SF、ミステリー、ジュブナイル、ロマンスなどなど、物語は様々な表情を見せながら展開してゆきます。テイストの違うそれらを一つにまとめ、より一層の深い味わいを添えてくれるのがマジックなのです。しかも、そのどれとも非常に相性がいい。ライター・杉江松恋氏のブログbookholicに、「2019年度上期ミステリー総括(国内編)」のトークイベントについて紹介されていますが、こちらで本作は第6位に選ばれたとのこと。ロボットやAIと共存する至近未来、消えてしまった少女をめぐる謎、そして、マジック。これら三位一体となった面白さが、ミステリーを大看板に掲げる他作品を押さえてのランクインとなったのでしょう。 活字から溢れる魅力的なマジック では、そのマジックは、どのように描かれているか。これはもう、圧巻です。非常に丁寧で繊細な描写で作り上げられたマジックのシーンが、贅沢なほどふんだんに散りばめられています。その一つ一つに触れるたび、作中人物と一緒になって目を丸くして驚き、歓声を上げ、笑顔になることでしょう。 まとめと所感 ミチルとの生活、たくさんの人との出会いの中、ヒカルはこの思いを胸に、マジシャンとして、人として、成長してゆきます。ヒカルがマジックを通して魅せてくれるのは、人が人とともにある喜び、ともに笑いともに泣きともに生きる喜び。そう思わずにはいられません。そして、その喜びを魔法というのなら、きっと誰もが魔法使いになれるはず。さぁ、右手を上げて、ワン、ツー、スリー! 大切な人とご一緒に、どうぞ魔法を、Magicを召し上がれ。 魔法を召しあがれ (作者:瀬名秀明 出版社:講談社 発売年:2019/5/16) 出典:bookaholic “これが2019年度上半期に読むべき国内ミステリーだ(下北沢B&Bイベント総括)” www.bookaholic.jp この記事のライター 笠井ゆき:大学卒業後、紆余曲折あって、司会業に従事。その一方で、物書きにも。現在、葬儀司会者とライター、二足の草鞋を履いて奮闘中。
0 Airbnb Online Experience Magic Category World’s No. 2 Bestseller! │ David John’s Virtual Magic Show 2021-06-04(Fri)