手品を使うのはマジシャンだけではありません。相手の気をそらして財布を盗むスリ師やカードを操るポーカーのディーラー、密室から脱出する囚人など……映画の中では演出やカメラワークもマジシャンとなって私たちに魔法をかけます。今回ご紹介する映画では、詐欺師たちが鮮やかなマジックを見せてくれます!細かなトリックから大がかりなものまで。彼らの鮮やかな手口、あなたは見破れますか? 映画『スティング』とは? 1973年に公開された映画『スティング』。アカデミー賞では主演男優賞など4部門にノミネート。作品賞、監督賞、脚本賞等7部門を受賞しました。笑ってしまう軽快な語り、ハラハラドキドキのストーリー、予想出来ない展開に、今なお根強い人気がある犯罪映画です。そして、本作は騙されるのが快感になる、マジシャンの映画でもあります。言葉や大きな手振りで相手の気をそらしたり、いつの間にか物やカードをすり替えたり……とその手口はまさにマジシャン!その中身を少しだけご紹介します。 簡単なあらすじ 1936年アメリカ。詐欺師のジョニーがいつものように仲間と一緒に、道端にいる人からお金を騙し取っていた。ところが今回は相手が悪かった。なんとマフィアから大金を騙し取ってしまったのだ。そして、マフィアのボス、ロネガンの刺客によってジョニーの仲間は殺されてしまう。ジョニーは仲間の仇を討つことを心決めて、伝説の詐欺師ヘンリーに助けを求めた。ロネガンに一泡吹かせてやるのだ。ロネガンの刺客から身を隠しながらジョニーとヘンリーが準備を進める一方で……。ジョニーにニセ札をつかまされた汚職警官もジョニーを追い、FBIも以前から指名手配されているヘンリーを追ってこの街にやってきていた。マフィア、警察、FBIをジョニーとヘンリーは騙しきれるだろうか? 01. 見事なトランプさばき 映画『スティング』といえばこのシーンが印象的!という方も多いのではないでしょうか。マフィアのボス、ロネガンを騙すために列車に乗ったジョニーとヘンリー。列車の中で行われる賭けポーカーでロネガンを負かそうと、ヘンリーはトランプでいかさまをする練習をします。トランプをシャッフルすると、最初一番上にあったスペードのAはどこかに混ざってしまうはずです。ところが、ヘンリーが何度シャッフルしても一番上をめくるとスペードのAが現れます!この鮮やかなトランプさばき、何度観てもうっとりしてしまうのです。そしてトランプ技の見せ場は、ロネガンとの賭けポーカー本番でも……。この一連のヘンリーのトランプマジックは一見の価値ありです! 02. 大がかりな「タネ」 ロネガンからお金を騙し取るため、ジョニーとヘンリーは「嘘の賭博場」を作ってしまいます。ジョニーとヘンリーが準備する「タネ」の中でも、1番大胆なものはこれではないでしょうか。「嘘の賭博場」は文字通り、本物ではない賭博場です。古い空き部屋を改装し、あたかも昔から経営しているかのような競馬の賭博場を作ってしまいます。綺麗なホール、お金のやり取りをするカウンター、洗練されたスタッフ、みんなこの数日で用意したものです。この場所では、馬券も流されている競馬中継の放送も偽者。しかも、ここで楽しんだり、負けて悔しがったりしているお客様も偽者!お店も馬券も小道具も人すらも、ロネガンのために用意したマジックの「タネ」なのです。この場所で「タネ」を準備しているシーンはワクワクしますが、ロネガンがこの場所にやって来てからは空気も一変します。果たしてロネガンは「タネ」に気付かずに騙されてくれるでしょうか? まとめ 本作は今回ご紹介したシーン以外にも、人を惑わせるミスリードが存在します。さりげない会話やカメラワークは、「何か」を隠すように計算されつくされているのです。そのミスリードは、警察を騙すためのものだったり、マフィアのためだったり、はたまた私たち観客に向けての仕掛けだったり……!観終わったら、もう一度観返したくなる映画です。ぜひ、タネを探しながら楽しんでみてください。 『スティング』 Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント(C) 1973 Universal Studios. Renewed 2001Universal Studios. All Rights Reserved.※2020年10月の情報です この記事のライター さとこ・ゴリラ:映画ライターコメディ、アメコミ、特撮が大好きなゴリラ